というわけで男がやってきたのは、特に思い出深い緑道公園
この場は男が少年時代によくザリガニを釣り遊んだ場所である。
また、夏でも比較的涼しいという理由から、夏場は比較的にぎわう
ある種の憩の場として利用されてきたのだった。
それにしてもこの八潮という島は不思議なもので、高層マンションが立ち並ぶコンクリートジャングルもあれば
鬱蒼と生い茂った雑木林、果てなく伸びる運河、整備整頓された公園といった
様々な面を持っている。
そう、だから子供にとってはパラレル島のような、何かそういった特別な場所なのである
だが、そのような特別な場所に、男は戦慄を感じている。
そう、読者諸君もご察しのとおり、この男の目の前には


誰も居ないのである。

男の目の前には、ただただ鬱蒼と茂る雑木林と、
男の火照った体温に集まる鬱陶しい薮蚊が飛び回るだけなのだ。
さあ、諸君は疑問に思うだろう。
何故、真夏の昼の時間帯に、少年少女だけとは言わない、大人も老人も見かけないのだろうと

男は誰も居ない公園に腰かけ、その無造作に伸びた髪の毛を右手で掻きながら
特に何かを考えるでもなく、かといって何も考えないわけでもない
お得意の「ぷかぷか」の状態になった。
さて、男がこの「ぷかぷか」の状態になっている間に読者諸君にこの話のタネを明かそう。
実は、この八潮、いや、大井埠頭一体は夏季になると、ある公害に蝕まれるのだ。
その公害は特に昼、そう今男が「ぷかぷか」している間も、この島一体を蝕み続け
仕舞には、区のお偉いさんが警報を発しなければならないぐらいになってしまうのだ。
諸君は、光化学スモッグというのをご存知だろうか?
大気中の汚染物質が、あの燦々と照りつける太陽の紫外線と化学反応を起こし
人体に有害な、見えない毒素として大気中を漂う、恐ろしい現象である。
そして、あろうことか、この男がフラフラと外に出たこの日も、光化学スモッグ注意報が発令されていたのだ。
まぁ、実のところね、たまに八潮の住民向け放送で発表される「光化学スモッグ注意報」が
発令されたとき、一体八潮に住まう人々の様子にどんな変化があるんだろうかー
なんて思ったわけね。

結論:注意報が発令されようとされまいと、八潮には元々人が居ない。
それにしても、最近の少年たちはホントにどこで遊んでいるのだろうか
と思って図書館に行ったら、すげー数の小学生が椅子に座ってDSやってた。
絶望した。