新横浜の駅を出発してから、どれほどの時間が経ったであろうか?
あれだけあった映画までの待ち時間も、あとどれだけ残されているのであろうか?
そして我々が向かっている目的地までの距離は、あとどれだけあるのだろうか?
その全ての問いに対する答えは、ただただ無情にも磐井君を追いつめる。
というのも、先程から磐井君の態度が何となくイソイソとし始め、口数もグッと減ってしまったのだ。
その横で私はヘラヘラと笑いながら写真を撮る。

磐井君顔に生気がないぞ・・・なんか売れないデスメタルバンドのCDジャケットみたいな顔だ。
それもそのハズ―我々がどんなに歩こうと、どんなに道を急ごうと、目的地ららぽーとが全然見えてこないのだから。
うーん、軽い気持ちで「暇潰しにららぽーと行こう」なんて思ったからいけないのか?
というか磐井君のお兄さんはちゃんと道を教えてくれたんじゃないのか?

そんな問いかけにも答えられぬほど磐井君は切羽詰まっている。
もうこうなってしまってはプライドの問題だ。
今、磐井君の頭の中には性欲も食欲も睡眠欲も無く、
ただ単に「絶対に徒歩で目的地にたどり着く!」という欲求のみが磐井君を突き動かしているのだ!
こうなってしまった人間には何を言っても無駄、つまり本人が納得するまで付いてゆくのが得策なわけで・・・
そんなわけで、先程から私もホテホテと磐井君の後に続いて、行き先の見えぬ行軍をしているのだ。
しかし、やはり確固とした意志を持った人の姿は美しい。
今彼の目に映るは、ららぽーとまでの道のりとそれを踏みしめる己の足のみであり
その他公共交通機関を使用してのららぽーと到着など眼中に無いのである。
そんな彼は私の方を向いてこういった。
「大丈夫、もうすぐ到着するから」
そういった磐井君の後ろ姿は、まるでシュワルツネッガー演じるターミネーターのように頼もしく
先程まで「カメムシみてぇだな」と思っていた彼のジャージ姿も
「仮面ライダー」のように
見えるのだった。
そう―

力強く・・・見えねぇーっ
結局、我々はJR
徒歩でららぽーとへ!という大望を果たせずに終わってしまったのである。
しかも、ららぽーとに着いたはいいが、見学時間たったの10分というほうほうの体・・・
それにしてもJR
「交通費俺が出すから電車で行こう!」
と言ったのは今でも忘れられない・・・。人間、時には妥協という物も必要なのだ。